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債務の返済が見込めず、将来的な生活の再建が現状難しいならば、自己破産を検討することが必要です。自己破産では、養育費や税金などを除いて、抱える全ての債務の支払いが免除されます。ここでは、自己破産の種類、他の債務整理の違い、手続きの流れについて解説しています。
自己破産をすることで全ての借金がなくなるならば、制度の乱用も想定されます。破産法では「免責不許可事由」を規定し、制度の乱用を抑制しています。例えば、特定債務者への偏った返済、浪費やギャンブルでの大きな借金、財産の隠ぺいなどが該当します。
しかし、こうした免責不許可事由を厳密に適用すれば、自己破産の機能が働かなくなります。免責不許可事由に該当しても程度が重くなければ、裁判官の裁量で免責可能です。
自己破産の手続きは2種類あり、同時廃止と管財事件があります。債権者に配当する財産がない場合は、同時廃止です。個人が自己破産をする場合の多くが、同時廃止です。
債権者に配当すべき財産がある場合は、管財事件です。管財事件は、破産管財人が選出され、債務者の財産を換金し、債権者に分配します。裁判所に予納金を納めることも必要で、手続きに多くの時間がかかります。
債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産があります。簡単に言うと、借金の免除額が、自己破産が最大で、任意整理が最小です。任意整理は簡易な債務整理方法で、主に借金の利息を減額し、残りの元本を3~5年で返済していく方法です。任意整理は裁判所に申し立てることなく手続きを行えます。
自己破産は、税金等以外の借金がすべて免除される裁判上の手続きです。自己破産が認められると、財産の処分をすることが必要ですが、債権者への返済が免除されます。しかし、官報にも掲載され、任意整理よりもペナルティが大きいのも事実です。
自己破産と個人再生の違いは、債務の免除額の違いです。個人再生は任意整理より大幅な債務の免除が可能ですが、減額された借金を3から5年で返済します。個人再生は財産の処分が必須というわけではありません。住宅ローン特則を利用することで、家を残したまま借金を減額することも可能です。
自己破産の場合は、財産を処分することが必須ですので、家の処分が前提です。
少額管財の場合の自己破産手続きについて見ていきます。債務者が弁護士に依頼すると、貸金業者に受任通知を送付します。これで取り立てが止まります。貸金業者に取引履歴の開示を求め、利息制限の法定金利の引き直し計算を実施します。申立て書類を収集し、裁判所に申立てを行います。裁判官と面接が行われ、破産手続きが開始され、管財人が選出されます。その後、管財人面接、債権者集会を経て、免責許可決定がされます。
同時廃止の場合の自己破産手続きは、免責審尋が行われ、裁判官と面接が行われます。
裁判所に自己破産が認められると、税金の滞納などを除き、借金返済の義務がなくなります。自己破産は破産者の生活再建に有用ですが、もちろんデメリットもあります。ここでは、自己破産のメリットとデメリットについて考えていきます。
自己破産のメリットは、借金をすべて整理でき、生活再建の道筋をつけられることです。今までは複数の貸金業者からの取り立てで悩み、精神的にも苦痛であったでしょうが、その取り立ても終わります。
自己破産のデメリットは、官報やブラックリストに一定期間掲載され、いくつかの制限がかかります。例えば、職業上の制限やクレジットカードの使用などがあります。また、手続きの結果、20万円を超える財産が処分され、連帯保証人にも影響が出てます。
自己破産は権利が制約されますが、全ての権利に影響が出るわけではありません。自己破産の誤解について考えていきましょう。
自己破産をしても、戸籍や住民票に記載されることはなく、選挙権が停止されるわけではありません。年金支給もなくなりません。海外渡航や配偶者のクレジットカードの使用は可能です。クレジットカードは一定期間の経過後に作成可能です。裁判所から企業への通知はありません。
自己破産は、債務整理の中の1番最後の手段です。任意整理や個人再生の手続きであれば、権利の制約を少なくした債務整理も可能です。任意整理や個人再生の要件は素人には分かりにくいため、債務整理に精通した弁護士に相談することをおすすめします。